数あるセイコー社の時計の中でも、1960年に発売が開始されたグランドセイコーは『特別な存在』です。
時計の本場「スイスに追いつけ追い越せ」の精神でやってきたセイコーの一つの答えがこのモデルにあるからです。
クロノメーターを超える時計
セイコーは当初、「クロノメーター優秀級」に準じた独自の検査に合格したものを『クロノメーター』と謳って発売していましたが「クロノメーターを名乗れるのは天文台から公式に認定されたものだけ」と苦情が入り、1966年以降クロノメーターの表記を中止します。
セイコーはこれを受けて、独自に「クロノメーターよりも厳しい『GS規格』」を定め、グランドセイコーを「クロノメーターを超える時計」として更なる高みに引き上げました。
スイス時計界と肩を並べた
1967年、時計メーカーの技術と威信をかけた「クロノメーター精度コンテスト」において、セイコーはオメガに次ぐ企業賞2位を獲得。コンテスト初挑戦から4年目にして得たこの結果は、セイコーの実力がスイス時計界と肩を並べたことを証明するものとなりました。
しかしながら、この年のクロノメーターコンテストの結果は世間に公表されることなく、翌年からコンテスト自体が中止となりました。これはスイス時計界がどれだけセイコーを脅威に感じていたかを象徴しています。
V.F.A (Very Fine Adjusted)
それでもセイコーが切瑳琢磨してきた技術は確実に商品へとフィードバックされ、グランドセイコーは更に進化していきます。
その最たる例が「GRAND SEIKO V.F.A」です。
特別に調整されて市販されたこの時計は、月差±1分(日差±2秒)という常識外の精度を実現したものでした。
このようにグランドセイコーは当時のセイコー、ひいては当時の日本人の情熱や努力を具現化したものであるということが言えるのです。